こけしは幸せを守る玩具
こけしは江戸時代後期、東北地方の温泉地のお土産として作られたのが発祥と言われています。山で木材を挽き、椀や盆を制作していた木地師たちが、湯治場で販売する子供向けのお土産品として作り始めたことが、こけし誕生の有力な説です。当時、赤い染料を使った置物は魔除けや縁起物として好まれていたので、赤をほどこし可愛らしさもあるこけしは、子供のよき遊び相手であり幸せを守る玩具として全国に広まったそうです。
こけしが誕生した当初は共通の名称はなく、木で作ったから「きでこ」、芥子人形からきた「こげす」、魔除けの人形這子(ほうこ)からきた「きぼこ」など、各地で異なる名前で呼ばれていたそうです。しかし、あまりにも名称が多すぎて不便だということで、1940年(昭和15年)にこけし工人(職人)や愛好家などの関係者が集い「こけし」と統一することが決められました。
こけしの材料として最も使われるのは、白い木肌を持つ「ミズキ」や、光沢のでる「イタヤカエデ」などで、10月末から11月半ばに原木を伐採し、枝を落として1ヶ月ほど伐採現場にねかせ水分を抜きます。水を抜いた原木は約半年ほど自然乾燥させ、こけしの材料となります。材料である樹木を乾燥させたあと、玉切り、木取りの作業に入ります。原木である大きな木材を適度な寸法に整えることを玉切り、こけしを作るために適した形に製材することを木取りといいます。材料となる木をろくろの軸の先端に取り付け、台に固定してカンナで頭の部分、胴体の部分をそれぞれ形作るように削っていきます。仕上げの磨きのあと、生命息を吹き込む絵付け作業でこけしは出来上がります。
こけしは産地ごとに特徴のある形や絵付けがされ、子供のおもちゃであったこけしもいつしか民芸品や美術品として大人が楽しむものとなりました。昭和以降「こけしブーム」も度々起こっています。第三次ブームと言われる近年では、こけし好きの女性を指す「こけ女」という言葉も生まれました。
みちのくの風土が育んだこけしは、人の気持ちを幸せにしながら、これからも愛し続けられていくことでしょう。
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