ピアノの音色は木の響き
ピアノに使用される木材には、「スプルース」「カエデ」「ブナ」などがありますが、中でも代表的なのが「スプルース」です。スプルースは、マツ科の針葉樹で絹目の美しい光沢を持ち、木理は通直で寸法の大きな材がとれます。マツ科特有のヤニがあまりなく無味無臭の良材です。軽軟で弾力性があり、乾燥・加工がしやすく表面の仕上げも良好です。またスプルースは、楽器部材の中でも「比重が少ない(弦の振動を増幅するのにロスがない)」「音響伝播速度が速い」など音響特性に優れているのが特長で、音と密接に関係する響板や響棒に用いられています。
ピアノの弦は鋼鉄製。一方、それを豊かな響きに変える響板は木でつくられています。ハンマーが弦を打った音をただ大きく増幅するだけなら、金属板の方がよほど効率が良いはずです。それなのに、なぜ響板は木でつくられているのか。それは低い音も高い音も同じように増幅してしまう金属と違って、木は低い音だけを増幅し、高い音は逆にカットする性質があるからです。
つまり、響板は響かせるための板であると同時に、ある意味では響かせないための板でもあるのです。とりわけスプルースをはじめとするエゾマツの仲間が響板材として珍重されるのは、これらの樹種が高い倍音をより効果的に吸収して、まろやかに感じられる高さの音のみを豊かに響かせる特性があるためです。
ショパン国際ピアノコンクールで反田恭平さんが2位、小林愛実さんが4位に入賞されたことは記憶に新しいですが、公式ピアノとして使用が許されているのは4社のピアノメーカーで、その中でヤマハとカワサキ2社のピアノが採用されています。音楽のような文化的・芸術的なジャンルで、プレイヤーもピアノも世界に認められるのは、日本人としてはやはり誇らしい事ですね。
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