木彫りが現す力強い祭祀のかたち
木彫りの最大の魅力は、あたたかみです。作り込まれた木彫り作品は見るものにぬくもりと癒しを与えます。人間が本能として木に愛着を感じているからといえるでしょう。また木彫りの作品はほかにはない躍動感があります。東大寺南大門に安置する金剛力士像は、隆々たる筋肉と険しい表情がありありと彫られていて、今にも動き出しそうな躍動感を得られています。木材の持つあたたかみが作品にうつり、まるで生きているような印象を生み出すのは、木彫りならではの醍醐味ですね。
写真は木彫前田工房の代表取締役でなにわの名工でもある前田暁彦さんです。先日、新今宮でオープンした星野リゾートの都市型ホテルOMO7に行った時に木彫の実演されていました。木目が美しいヒノキ材に見事な龍の彫り物をされていました。愛媛県西条市のだんじりに納品予定だそうです。その後いろいろお話を聞く中で、写真と前田さんのことをコラムに掲載させて頂いてもよろしいですかとお願いしたところ、快諾して頂きました。だんじり以外の木彫も手がけておられて、木材はどちらで仕入れられていますかと質問したところ、なんという偶然でしょうか、摂津の中喜さんとのお答え。中喜の社長さんとは阪神タイガースの応援で一緒に球場に行く仲だとか。たまたま訪れたホテルで、中喜さんと深い縁のある方とお会いできるとは。
木彫前田工房は主にだんじり・やぐら・太鼓台などの祭祀に関わる木彫刻、それ以外の木彫刻作品でも海外を含め数々の賞に輝いています。2021年の法人化によって引き合いが増え、今やだんじり彫刻に限らず、さまざまな商品ができ、木彫りの新たな可能性を開きました。社長であり親方でもある前田さんは彫刻物の下絵を決めて荒削りをし、作品に命を吹き込む大切な部分を担います。今後も木彫り職人を目指す人たちと木彫り業界の明るい未来に向けて、一刀一刀に熱い思いを力強く刻んでいかれる事でしょう。
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