桐箪笥は日本の風土が生んだ逸品
桐箪笥が日本の一般家庭で使われ始めたのは、江戸時代から明治初期にかけての頃だといわれています。それまで、木製の長持(ながもち)や櫃(ひつ)で収納できたものが、衣類など人々の持ち物が増えていくにつれ、箪笥が必要になってきたのでしょう。
そんな日本で誕生したばかりの桐箪笥は、女性でも持ち運べる軽さと丈夫さが特徴でした。当時の桐箪笥の側面には持ち運び用の取手金具が付いており、実際によく持ち運びされていたようです。女の子が生まれると桐を植え、結婚する際にその桐で箪笥を作り嫁入り道具にするという風習があったのも、桐箪笥のこうした一面があったからでしょう。
桐箪笥の特徴は、衣類を湿気や害虫から守り水害や火災にも強いという点にあります。桐の板は軽くて柔らかく、機密性が高いため隙間のない箪笥を製作するのに適した素材です。実際に水害で桐箪笥が流された際、水が引いた後に乾燥させてから開けてみると、泥水は全く入っておらず中の衣類は守られていたという逸話があるほどです。また、表面が焦げて炭化しても燃え広がりにくいのも、木材の中でも熱伝導率が低い桐ならではの特性です。タンニン、パウロニン、セサミンなどの成分により細菌や害虫を寄せ付けず、湿気に強いため、湿気の強い日本の風土で衣類を収納するのに重宝されてきました。
実用性の高さはもとより、桐箪笥には他にはない気品と暖かみが今日まで人を惹きつけています。色白で絹のような木肌、くっきりと刻まれた美しい木目には凛とした存在感があり現在でも熟練の職人たちにより作り続けられています。
桐箪笥は、まさに日本の風土と和の心と職人技が生んだ逸品です。
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