法隆寺は世界最古の木造建築物
法隆寺は推古15年(607年)に創建されました。その後670年に火災で消失しましたが、7世紀後半に再建されています。法隆寺の建物のうち、五重塔・金堂・中門・回廊の四つが現存する世界最古の木造建築物です。伽藍の中心である金堂は693年に再建されました。金堂・中門・回廊の柱には、エンタシスの柱が使用されるなど、飛鳥時代の様式を現代に伝えています。1993年には、「法隆寺地域の仏教建築物」がユネスコの世界遺産に登録されています。
法隆寺の西側には宮大工が代々住み、技術を受け継ぎながら修繕や点検を行ってきました。近代では、第二次世界大戦を挟んで1934年から1985年まで昭和の大修理が行われました。全ての木材を一旦バラして、傷んだものを差し替え、再度組み立て直しました。
日本は高温多湿なため木造建築物は常に、腐朽・蟻害・雨風などによる劣化の危険にさらされています。修理を行う宮大工は、金堂や五重塔の木材がかなり傷んでいるように見えたため、ほとんど新しいものに変えなければならないと予想していました。しかし、古びた柱を解体してカンナをかけると、生のヒノキの香りが漂うほどの状態であったといわれています。実際に木材を取り替えたのは、軒などの雨風に直接さらされる部分だけでした。
古材の強さを調べると、ヒノキは木材の中で耐久性や保存性が最高レベルであり、伐採してから200年間は強くなり、その後1000年かけて徐々に弱くなるといわれています。法隆寺では、樹齢千年以上のヒノキが使われていることも長寿命につながっています。
法隆寺境内にある五重塔は、地震国日本にあって1300年以上も創建時の姿を現在に留めています。五重塔は、高さ約32メートルで、ヒノキが使用され、「積み上げ構造」といわれる建築様式で建てられています。塔の真ん中には一本の柱がありますが、各階とは切り離されており、地震の際には各階が「振り子」のように互い違いに揺れて、振動を吸収する構造になっています。この建築技術は、現代の最先端建築である東京スカイツリーにも採用されています。
「古代の建築物を調べていくと、古代ほど優秀ですな。木の生命と自然の命とを考えてやってますな。飛鳥の工人は、自分たちの風土や木の質というものをよく知っていたし、考えていたんですな。」法隆寺の解体復元を行なった宮大工・故西岡常一さんの言葉です。
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